ささき動物病院

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イヌの消化器系の病気について (下部消化器15)消化器系

便秘の症例と、その治療について

偽宿便:長毛の犬種で、会陰部周辺に発生します。手入れ不足で、汚染便が肛門を塞ぐ状態となり便秘が起きます。ハエウジ症の原因でもあります。
治療は、痛みを伴うこともありますので、鎮静、もしくは麻酔にて処置します。便の塊は、少しずつ剥離していきますが、皮膚に感染があり、強度の炎症があります。局所消毒を施し、抗生剤、抗炎症剤を投与します。再発を防ぐために毛の手入れは欠かさず行います。

巨大結腸症:原因として、先天性の筋層間神経の変性によるもの。後天性として、便の 貯留による結腸アトニー(麻痺)。直腸または肛門の腫瘍。偽宿便。会陰ヘルニア。自律神経障害などです。
治療は内科的治療があります。宿便除去後、予防的治療として高繊維食や、ピコスルファート(下剤)の投与。結腸平滑筋の運動促進のためにモサプリドの投与をおこないますが、定期に宿便除去をおこなわないと排便維持ができないようです。先天性や長期にわたる後天性の巨大結腸は結腸の運動機能が回復することはなく、外科切除を検討します。
直腸の機能が正常であれば排便機能を維持できますが、状態によって下痢がつづくことがあります。

次回もひきつづいて、便秘の症例を紹介していきます。

イヌの消化器系の病気について (下部消化器14)消化器系

便秘について

便秘は、糞塊が直腸、肛門を通過しにくくなる状態で、直腸による水分吸収が進行して、なおさら乾燥し堅固になる状態です。蠕動運動は初期には亢進しますが、徐々に運動は低下していきます。
原因として、結腸内の異物(骨、毛など)、骨盤の変形(骨折など)、腫瘍、前立腺の肥大自律神経障害、会陰ヘルニア、食物の性質などです。
臨床症状は、排便が数日間なく、しぶりや食欲不振。嘔吐などがあります。
進行すると脱水症状がおきて、沈うつ状態となります。
診断では、腹部を触診すると下行結腸が大きく膨らんでいるのがわかります。
直腸診断により、直腸の糞塊の有無、狭窄か、会陰ヘルニア、肛門腺炎、骨盤狭窄など便秘にいたる原因と状況が把握できます。レントゲン検査、バリウム等はこの直腸診断によって、2次的に行います。
進行すると肛門組織は腫脹し、直腸脱も併発することもあります。

次回は便秘の治療と、原因疾患についてお話します。

イヌの消化器系の病気について (下部消化器13)消化器系

好酸球性結腸炎がありますが、結腸にとどまらず、胃、小腸、大腸と広範囲に症状が起こります。免疫疾患のひとつでもあります。臨床診断では、血中の好酸球が増加し、血便や、しぶりがあります。治療は、低アレルギー食、免疫抑制剤の投与です。

腸過敏症候群は環境の変化に対応できずに発症します。転居。飼い主の不慮の逝去。飼い主の変更家庭内の新しい家族(新生児や、新しい愛犬)。工事、騒音、悪臭(塗料など)。臨床診断では、糞便検査、血液検査、生検(結腸)ですが、特徴的な病変があまりなく異常所見はありません。消去法にて腸過敏症候群と判断します。治療は、犬の特徴、性質。ストレス因子の除去が可能か。下痢の臨床上の特徴から治療を進めていきます。

まず、ストレス因子を除去することです。ただし、家庭内のストレス因子は除去しにくいので、分節収縮を促進させる薬剤の投与が効果的であります。また、食物繊維を増加させることは、結腸の運動リズムを良好にします。興奮しやすく神経質な愛犬は、鎮静剤を投与します。生涯にわたる治療と考えて、ストレス因子を見極め、除去する努力は怠らないことです。

次回は便秘についての原因についてお話します。

イヌの消化器系の病気について (下部消化器12)消化器系

寄生虫性結腸炎は、鉤虫、鞭虫(回虫と同属の線虫類)によって結腸の粘液成分が増加(結腸の杯細胞が過形成を起こすため)、場合によっては水様性下痢や、血液が混入します。

診断は、糞便検査による虫卵確認。血液検査(白血球の好酸球増加)。診断がつかない場合、内視鏡検査、生検をおこないます。治療は、駆虫剤フェンベンダゾール、コンバントリンなどです。

組織球性結腸炎はボクサー、フレンチブルドックで報告されています。結腸の粘膜に、組織球の存在と粘膜潰瘍が見られます。症状は、下痢、新鮮血と、粘液があり、体重減少が起こります。血液検査では白血球の増加と、低アルブミン血症と、高ガンマグロブリン血症がみられます。内視鏡検査にて潰瘍を確認し、組織標本(生検)を採取して、PAS染色陽性で組織球が確認されたうえで診断します。治療は、サルファサラジン、タイロシン、テトラサイクリン、クロマイなどです。長期投与が必要です。場合により生涯治療が必要かもしれません。

肉芽腫性結腸炎は、回腸と大腸に限局した肉芽発生が特徴です。出血便や発熱。嘔吐、体重減少があり、重症例では遠位結腸や直腸に排便の通過障害が起きてしまい、便秘、しぶり、排便困難、血便を招いてしまいます。

診断はバリウム造影や、エコー、内視鏡などです。瀰漫型(ところどころにある場合)は結腸全体を内視鏡で確認する必要があります。治療は外科による切除です。瀰漫性の場合は、サルファサラジン、プレドニゾロン、タイロシンなどです。予後は不良で、再発性の高い疾患です。

次回もひきつづき症例紹介いたします。

イヌの消化器系の病気について ( 下部消化器11)消化器系

大腸の多くを占める結腸は、水分、電解質の吸収、および糞便を貯蔵することが 臓器としての仕事であります。その仕事がうまくいかなくなると、下痢、しぶり、 排便困難、出血、結腸由来による嘔吐、便秘が起きます。 それらの結腸疾患を説明します。

急性結腸炎:原因は腐敗した食事の摂取。ごみ、骨などの擦過。
サルモネラ、カンピロバクターなどの病原菌による感染などです。
症 状:大量の水様性下痢を起こします。しぶりが多く認められます。
治 療:抗菌剤の投与。脱水があれば、水分供給と電解質の補給。
サルファサラジンの投与。

特発性結腸炎:犬の慢性下痢として多く見られ、症候群として認識されます。
ジャーマンシェパード、コリー、ラブラドールに多く見られます。
特発性結腸炎は原因が特定されることはありません。
しかしながら、食物因子が大きく関与しているようです。
食事療法のみで改善する場合があります。
他原因として、サルモネラ、カンピロバクター、高窒素血症、
小腸性腸炎からの影響(胆汁や、脂肪の流入)、
二次的な免疫介在腸炎、寄生虫、などです。
症 状:食欲、元気はありながら、粘液を多く含んだ水様性下痢を呈します。
嘔吐、血便を伴うのは30%前後になります。確定診断は内視鏡です。
治 療:サルファサラジンの投与。改善されなければプレドニゾロン。
それでも反応がなければ、メトロニダゾール。いずれも細胞性免疫を抑えます。
食事療法は蛋白制限食(処方食)を与えます。再燃の危険性が高いので
食事管理をしっかりして、蛋白制限食を継続するのが望ましいと思います。
理由として、特発性結腸炎の本当の原因が特定できてなく、
食事因子が大きく占めるので、少なくとも処方食を継続します。

次回も引き続き結腸疾患の症例を説明します。

イヌの消化器系の病気について (下部消化器10)消化器系

下部消化器である大腸についてお話します。

大腸は、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、直腸、肛門から構成されています。上行結腸と横行結腸で水分と電解質を吸収し、下行結腸と直腸で糞塊を貯蔵します。結腸は分節収縮と蠕動収縮によって食物は5時間以内に結腸に達して、結腸内の通過時間は、1日から3日ほどです。人と違って、この蠕動運動が逆方向に起こることがあり、食物が直腸まで急速に進まないように制御しています。また、結腸の特徴として、腸管内の内圧上昇と、拡張によって、結腸の分節、蠕動収縮を刺激されます。
よって、繊維質などを多く供給することは、下痢や便秘の治療に有効です。 下痢の場合、繊維は、分節収縮(内容物を混和)を促し、水分、電解質を吸収します。 便秘の場合、繊維は、蠕動(内容物の移動)を促して規則的に糞塊が排出されるようにな ります。

大腸は食物内の大部分の水分吸収を請け負います。小腸の吸収機能が低下したときは、 代償して水分吸収する予備能力があります。
結腸の粘膜は円柱状で密であり、塩類や水分が漏れ出るのを防ぐ構造です。栄養素の消化吸収は起こらず、細菌発酵によって揮発性脂肪酸が産生され塩類と同時に吸収されます。この過程が阻害されると、下痢が起こります。また、腸内細菌の産生する酸化脂肪酸が過剰になると、分泌性下痢を誘引します。また腸内細菌はアンモニアを常に産生します。肝臓で尿素に変換された後、腎臓で排泄されますが、肝臓、腎臓障害によって高アンモニア血症となり神経中枢の障害(肝性脳症)が起こります。

次回は大腸疾患についてお話していきます。

イヌの消化器系の病気について (下部消化器9)消化器系

下部消化器の各炎症性腸炎ついて述べていきます。

1.リンパ球性形質細胞性腸炎
好発犬種としてジャーマンシェパード。小腸における慢性炎症腸炎であり、腸粘膜の固有粘膜層に、形質細胞、リンパ球の浸潤がみられます。
症状は、慢性嘔吐、慢性下痢、慢性嘔吐と下痢です。炎症性腸炎でありながら嘔吐のみであり下痢がまったく認められない症状もあります。この性質が特異で重要な点です。
生化学検査では、低アルブミン血症、高ガンマグロブリン血症がみられます。
2.好酸球性腸炎
慢性炎症性腸炎であり、胃や大腸に及ぶこともあります。免疫細胞である好酸球が腸の 粘膜に集合する状態です。腸間膜リンパ節にも浸潤している場合があります。
3.グルテン過敏性腸炎
グルテンの消化産生物に起因します。グルテンが腸粘膜の上皮細胞であるじゅう毛に対し て免疫反応を起こし、萎縮を招いて吸収不良を起こします。アイリッシュセッターで確認 されており、家族性過敏症で遺伝性があるようです。
4.局所性腸炎
肉芽腫様腸炎であり、進行性で回腸が特に障害されます。新鮮血をともない、結腸終末部 に炎症がおきると、しぶり(腹圧をかけても、あまり多く排便できない状態)が発生し、 腹痛を伴います。予後不良です。

<各腸炎の診断、治療について>
診断は、血液検査に加えて、内視鏡による観察、腸の細胞診断です。 治療は免疫抑制剤の投与。低アレルゲン食、低脂肪食、アレルゲンフリー食の給与。 診断によっては外科摘出(局所性腸炎、腸腫瘍)を行います。

次回は、下部消化器の終末組織である大腸、肛門についてお話します。

イヌの消化器系の病気について (下部消化器8)消化器系



下部消化器の炎症性腸炎ついて述べていきます。

炎症性腸炎とは?
症状として、慢性経過です。慢性嘔吐、慢性下痢、慢性嘔吐と下痢が特徴。
改善と憎悪を繰り返し、体重減少が顕著になります。
嘔吐物は、時間経過した未消化物であり、胆汁を含みます。
下痢は軟便、液状であり、悪臭を伴います。時々、貧血も見られます。
免疫介在性であり、腸粘膜に免疫性細胞(リンパ球、形質細胞、好酸球)など浸潤するのが特徴です。
診断名として、リンパ球性形質細胞性腸炎、好酸球性腸炎、グルテン過敏性腸炎、肉芽腫性様腸炎、などです。腫瘍性のものとしてリンパ肉腫、腺癌、腺腫、平滑筋肉腫などがあります。
カテゴリーとして、吸収不良性症候群と分類できるでしょう。診断は、内視鏡検査とバイオプシーによって確認できます。
治療は、食物アレルギーが関係した免疫疾患ですので、腸の免疫系が異物認識しない蛋白質、脂肪、炭水化物などの低アレルギー食を与えることです。
グルテンを含まない、タピオカ、ポテト、コーンなどが選択されます。また繊維量を増強することで腸の動きを良くします。
内服は、免疫抑制剤(プレドニゾロン、アザチオプリン、)を投与します。限局した腸炎にはスルファサラジンが効果的です。
腫瘍性のものは、外科摘出、プレドニゾロン併用の化学療法(抗がん剤:エンドキサン、オンコビン)などです。ただし予後不良の場合が多いといわれます。

次回は、各炎症性腸炎について説明します。

イヌの消化器系の病気について (下部消化器7)消化器系

下部消化器の各種下痢疾患の診断と治療について述べていきます。

1:吸収不良症候群の診断と治療

吸収不良は、小腸の繊毛の損傷が原因となります。食物過敏、寄生虫の大量寄生、細菌、 ウイルスによるものです。食欲は旺盛にもかかわらず、栄養がとれず痩せていきます。 また、すい臓から脂肪を消化する酵素(リパーゼ等)がうまく分泌されない為に、脂肪が 消化されず体毛はあぶらこい状態になり、便は大量で、臭気がきつく泥状です。 診断はコバラミンと葉酸の定量検査です。また小腸の生検(一部の細胞をとり、組織の状態を観察し診断すること)。 治療は食事療法や、消化酵素剤の投与です。

2:食物アレルギーの診断と治療

食物アレルギーの特徴は、消化器官以外の皮膚にも症状として現れます。 また、その両方同時におこることもあります。 消化器症状は嘔吐、下痢、腹痛。皮膚症状は、掻痒感、うろこ状(胸、腹部)に赤い腫脹 みられます。皮膚症状の延長上に、外耳炎を起こします。 診断はアレルゲンフリーの食物をあたえ、反応をみることです。症状が治まれば食物アレ ルギーと診断します。また、再度アレルゲンフリーの食事から、下痢をおこした食事を与 えて症状が再発すれば、食物アレルギーと確認できます。 現在は、アレルギー検査も充実しています。食物のアレルゲンの特定が可能です。 食事療法と、アレルギー検査の併用を薦めます。

次回は、炎症性腸炎について検討していきます。

イヌの消化器系の病気について (下部消化器6)消化器系

1:細菌性下痢の診断と治療

犬の小腸には常在菌があり、少なからず消化に関与しています。
しかし、その常在菌の平衡が崩れ、特定の菌が増殖すると下痢を発症します。
これには、環境の変化、食事の偏向、腐敗した食べ物の摂取などの外的ストレスや寄生虫の感染、免疫低下などが関与しています。

診断:慢性間歇性の下痢。排便の一部を採取して培養します。培養により細菌の種類を鑑別します。より精度のある検査は、葉酸、ビタミンB12の測定です。細菌は葉酸を合成し ビタミンB12を消費しますので、血清中の葉酸、ビタミンB12の絶対値、比率を測定することで、腸内変化を推察できます。細菌過剰は、葉酸値上昇、ビタミンB12値低下です。 治療:抗生剤、整腸剤、経口インターフェロン剤の投与。
抗生剤の選択は感受性試験を行うことにより判断します。

2:蛋白質喪失性腸炎(リンパ管拡張症)の診断と治療

小腸から吸収されるべき蛋白質が、吸収されずに腸内に漏れてしまう疾患です。

診断:体重減少、腹水、浮腫など。生化学検査、血球計算等で、アルブミン、グロブリン(血液中の蛋白)の絶対的低下。貧血。あるいは脂肪吸収試験の不良。葉酸、ビタミンB12 双方の低下。場合により、小腸の生検(組織を採取)、リンパ管造影など。
治療:免疫抑制剤や、抗生剤。心臓疾患や腸閉塞などでも発症するので、その 原因治療。処方食として低脂肪食を与える。(低級脂肪酸がリンパ管圧を上昇させ さらに蛋白を喪失するため)

次回も引き続き下痢疾患についてお話していきます。