ささき動物病院

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イヌの出産後について発情・繁殖・出産

愛犬の出産後の管理は、母犬に対して静かで清潔な環境を心掛けます。また保温もかかせません。

母犬の要求カロリーは非妊娠と比較して高くなります。1.5倍ほどのカロリー要求になります。授乳中に乳熱(体液中のカルシウムイオンが極端に減少し神経症状が発現すること)や、免疫不全、低血糖をおこすことがあり授乳中は、高カロリー食を与えるべきです。

母乳における初乳は、病気に対する抗体(受動免疫)を多く含み、仔犬はこれを、2〜3ヶ月引き継ぎます。新生児は体温保持を自らすることが難しく、母犬から60分くらい離れただけで、体温低下を促します。38度から2〜3度低下します。母犬との充分な接触が必要です。育児放棄の母犬の対応は、飼主が補助し新生児に、人口乳(免疫サポート等、病院専用の補助乳)を与えます。場合によっては動物病院にて保育器にて離乳まで看護します。

母犬は、新生児を良く舐め清潔にします。これは成犬になったとき、良くブラッシングしたり、なでたりすることにより、愛犬が喜ぶことの要因でもあります。

イヌの出産について発情・繁殖・出産

愛犬の出産について特徴的なことは、分娩直前に体温が下降することです。
妊娠末期における分娩2日前には平均38.0度。分娩1日前では平均37.8度。
一日を過ぎると平均37.4度と下降します。よって、妊娠末期54日以降、朝、昼、晩と平均体温を測定し、37.5度を下回るようであれば翌日分娩と予測します。

出産に関しては営巣行動(出産をする場所を探す)をおこない、陣痛、陰門の胎胞出現の過程があります。営巣行動も一種の陣痛徴候と考えて良いでしょう。

重要なのは、これらの分娩徴候から第一子が出てくるまでの所要時間であり、個体差があることです。平均は1時間未満です。分娩所要時間は胎児の頭数、胎児の体位、経産犬、未経産犬など、条件により変化します。短いもので30分以内。長いもので2時間以上も要します。ゆえに、超音波やレントゲンにより、頭数や胎児の状況や、妊娠犬の骨盤腔の大きさを確認することは、分娩状況、胎児の健康を予測するうえで重要です。妊娠末期は妊娠診断が必要と思われます。かかりつけの動物病院にて相談しましょう。

イヌの難産について発情・繁殖・出産

愛犬の難産で多く見かける例は、陣痛微弱です。陣痛を誘発させる薬剤として、オキシトシンがあります。あるいは膣を刺激するフェザーリングも有効ですが、動物病院にて対応します。また、胎児の失位(逆子)も原因です。獣医学用語では、正常な位置を頭位、尾位、と表現します。失位については前肢後転位、殿位、頭頂位、子頭側転位と表現します。
失位の評価は、膣内に指を挿入して確認することができます。

胎児数が少ない場合、胎児の過大、胎児奇形、子宮無力症も難産の原因となります。
これらの条件により、難産で産道から胎児を取り出すことが出来ない場合、帝王切開が適用されます。また、計画された帝王切開として、難産の発生率の高い犬種や、骨盤骨折などにより、産道の狭窄が事前に把握される場合、分娩予定日に帝王切開を行います。

胎児より先に、深緑色の分泌物(ウテロベルデイン)が確認された場合、胎盤剥離があるが、胎児が出産されない状態です。これは、帝王切開の重要な判断材料となります。

なにより、出産前後は、かかりつけの獣医師との連絡、相談を、緊密におこなうことです。

イヌの妊娠看護について発情・繁殖・出産

愛犬の妊娠看護は、主に栄養価に気をつけるべきです。妊娠初期はあまり食欲は増加しませんが、妊娠5週目から出産するまで10%ずつ摂取カロリーを増やします。

1日の必要要求カロリーは体重に対しての目安として約5kgまで400kcal、約10kgまで600kcal、約20kgまで1000kcal、約30kgまで1500kcal、約40kgまで1800kcal、となります。母犬の栄養状態が良好であれば、出産した仔犬は行動力、学習能力が高く、情緒面でも安定していることが、証明されています。

妊娠犬の看護は、禁忌な事柄を知ることが正しい看護といえます。

  1. 妊娠中はつわりで苦しむことがあり、出産陣痛と誤認することがあります。
  2. 妊娠を知りながらワクチン接種をしない。また、妊娠犬の同居犬もしない。
    交配する前に済ませることが必要です。
  3. 必要ない限り、あらゆる薬を与えない。特に交配した事実は、獣医師に確実に伝えます。
  4. 殺虫剤、ペンキ、不凍液など、化学物質から遠ざける。家の改築など、間接に影響を与えます。静かで、清潔な環境が望まれます。
  5. 長い散歩は控えます。
  6. カルシウムのサプリメントは与えない。過剰なカルシウムは胎児の亜鉛やマンガンの吸収阻害が発生して成長阻害を起こします。逆に妊娠犬の、出産後のカルシウム欠乏症の危険性が高まり、出産された仔犬の胃膨張も招きます。また、難産の原因にもなります。

イヌの繁殖について発情・繁殖・出産

愛犬の繁殖について基本的な繁殖条件を述べます。

雌犬の場合、繁殖適齢期は18ヶ月以上で情緒が安定し健康であること。
雄犬は、潜在睾丸(睾丸が陰嚢に降りていない状態)でないこと。
ワクチン接種済みか。(母体の抗体により仔犬が感染症にたいして防御能力を引き継ぐ。)
寄生虫駆除。(母体が寄生虫に感染していると、胎盤を介して感染することもある。)。

繁殖は、排卵から2日以内におこなうと着床率が向上します。発情開始から10日前後に 膣の細胞診(スメア像というもので、赤血球、有核上皮、無核上皮の比率により、排卵適期を確認する。)にて発情周期のどの期間に該当するか診断できます。発情期は粘液分泌が停止し雌犬は交尾を許します。血液検査では血中プロゲステロンは正確な排卵を確認できますが、検査機関に委託しなければなりません。

妊娠期は58〜63日であり妊娠末期に腹部が膨らみ、乳首が大きくなります。

イヌの発情について発情・繁殖・出産

雌の愛犬では、生後6ヶ月から10ヶ月ぐらいで思春期を迎えますが、犬種によって差異があります。小型犬では5ヶ月、大型犬(ラブラドール等)では10〜16ヶ月。
超大型犬(セントバーナード、ピレネー等)は最初の発情期は2歳以上にならないと見られないことがあります。ほとんどの雌犬では発情は年2回あります。中には鈍性発情といわれるものがあり、発情が分かりにくいものがあります。(陰部の分泌物が少ない。外陰部の腫脹が目立たない)

発情周期は4期に分類できます。

  1. 発情前期:(4〜15日間) 外陰部腫脹、膣からの分泌、落ち着かない、交尾拒否。
  2. 発情期:(4〜8日間)膣からの分泌が無くなる。排卵、交尾を許す。
  3. 発情休止期:(6〜8週間)
    卵胞刺激ホルモンの消失:卵胞の刺激、発育を促進するホルモン。(FSH)
    黄体刺激ホルモンの減少:排卵を誘発するホルモン。(LH)
    プロゲステロンの生成:発情休止期のホルモン。
    エストロゲンの減少:膣からの分泌促進、子宮刺激、発情前期のホルモン。
  4. 無発情期:(15週間) 性ホルモンの活動停止 交尾拒否。